変化できない「人罪」と変化を採りに行く「人財」
「融通の利かない設計士がいてねぇ…」
先日訪問した取引先(工務店)において、現場責任者さんがおっしゃった課題感。
何でも、
・営業現場の声を聞き入れない
・見込客のニーズを取り入れようとしない
のだそうだ。
さらに、「働き方改革」のもと有給休暇をGW期間中に5連休で取得するらしく、その結果GW期間に商談する見込み客へのプラン出しが通常のスケジュールより1週間以上遅くなるとのこと。
住宅業界といえば、GWなどの大型連休や週末土日は書き入れ時。
ほかの建築会社と競争しながらお客様から成約を獲得しようとするならば、お客様のニーズ(ウォンツ)や声を反映した(超越した)プランを競合他社に先駆けて提案することで、自社に対するマインドシェアをアップしようとするのが常套手段。
もちろん、それをマネジメントしきれていない会社側にも課題はある。
私も思わず、
「失注調査でも行ってお客様の生の声を聞かせてみてはいかがですか?」
「(設計士)本人にしてみれば、お客様の声ではなく営業担当者個人の要望と聞こえている可能性があります」
と、一つの解決手段をお話ししたりもした。
「(いつも)言ってるんだけどねぇ…」
「どこかに気の利く(先回りできる)設計士がいたら採用したいよ!」
と、ご責任者様の結論。
つまるところこの設計士さん、変わろうとしないタイプなのだ。
恐らく。
何事も、長所と短所、強みと弱みは表裏一体。
こういうタイプは、
・専門特化した仕事を深掘りする
・同じ業務に長時間従事することを苦にしない
・一人で黙々と取り組める
といった強みを見せる反面、
・フットワークが悪く変化を受け入れがたい
・(常に)変わらない自分を、価値として他者に受け入れてもらいたい
・保守的で他者の意見を跳ね返す傾向が強い
などといった、もったいない側面を露見する。
このケースの問題は、その設計士が、
外の声に耳を貸そうとしないスタンスだ。
もっと言うなら、外部環境の変化を認識していない(キャッチアップできていない)視野の狭さである。
既存の価値観で成り立っている環境に身を置くと、
いや、
その環境に身を置く事に居心地の良さを感じてしまうと、
気付かぬうちにあっという間に、保守的で意固地になってしまう危険性をはらむ。
一方、
そんな事を考えていたある日のある打合せで、同じ業界の別のヒトから驚くコメントを耳にした。
「わたし、もともとは建築というものに興味がなかったのですよね(笑)」
独立して自分の腕一本で食べていっている一級建築士さんで、
北海道から某賞を受賞した経歴の持ち主である。
北海道で学力TOPの総合大学を出た方なのだが、よくある話なのだが、
お勉強がある程度できて理数系が得意だったため、理系学部のあるその大学を進学先として考えた際、(何となく)建築学科を選んだそうなのだ。
入学当初は、周りの同級生の知識に圧倒され、
「おっと…これは、間違ったところに来てしまったかも…汗」
とも思ったようだ。
しかしその後、
「とにかく世界中の歴史的建造物を見て回るといい」
との研究室の教授からの教えを柔軟に聴き入れ、アルバイトでお金を稼いでは世界各国への見分旅行に出かけまくったそうだ。
実際、スペインをはじめ各国の歴史的建造物に触れていくうち徐々に建築の世界にはまり込み、結局は建築家への道を歩むこととなる。
ハウスメーカーでキャリアと実績を積み上げ、
その後独立して一級建築士事務所を立ち上げる。
独立後、手始めの仕事として建てられたモデルハウスは、
その独創性が評価されて北海道からの表彰を得ることに至る。
こちらの、(ある意味)成功したケースのポイントは、
「もともとは興味がなかった」という、いわば既存業界の常識を持ち得なかったポテンシャルの持ち主が、しかしながら、
・他者の意見を柔軟に受け入れ
・フットワーク良く世界中を見て回る
ことにより、
その既存業界に新たな価値をもたらしたことにある。
ふと打合せのシーンに視点を戻すと、
その一級建築士さんの手元には、昨今の建築にまつわる書物が多数携えられていた。
どうやら常に勉強し、自身をアップグレード(アップデート)させているようである。
ご実績とはかけ離れた愛嬌満点の笑顔と共に放たれる
「こういう変わった建築、面白いでしょう⤴(笑)」
のコメントからは、
変化し続ける(アップデートされる)自身が評価されることを望んでいるようにも感じられる。
高校生くらいだったろうか、英語の授業で習った慣用句を思い出した。
‟A rolling stone has no moss.”
「転石苔むさず」
なのである。
あ、我々が習ってきたのはアメリカンイングリッシュね。
つまり、ポジティブ解釈の方よ。
この場合の「シメ」は(笑)