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クリエイターとして、お客様を最大限に喜ばせる家づくりを
一級建築士事務所GLA代表髙野様

一級建築士事務所GLA 代表 髙野現太様

札幌市近郊

高校・大学での出会いと衝撃的な経験から建築家を目指す

布広 まずは建築家になったルーツを教えてもらって良いですか?

髙野様(以下・髙野) ものづくりには小さい頃からとても興味がありました。小学校の模擬店を出す行事ではダンボールで屋台のような空間を作ったり、近くの森の中に分け入っては自分たちでツリーハウスのような谷にせり出した秘密基地を作ったりしていましたね。ただ、まだ建築家という存在も知らないし、その道に進みたいと思っていた訳ではありませんでした。

布広 では、建築家になろうと思ったのはいつ頃なのですか?

髙野 建築家を目指したきっかけは高校の美術の先生の影響です。当時、美術は大好きな授業でその先生があるとき、教会建築について触れ「建築こそさまざまな技術や美術が集まった総合芸術なんだ」と言われたのですね。ちょうどそのころガウディのサグラダ・ファミリアの存在も知り、そこから建築に興味を持ちはじめました。大学では建築の勉強をしようと北海道大学の建築都市学科に入学しました。授業の方針もあり具体的なデザインに関する講義や実際の建て方をリアルに学ぶ機会は少なく、創作意欲の塊の私にはとても物足りませんでした。そこで建築雑誌だけではわからない「生の空間」というものを自分の脚で見て廻り、勉強することにしたのです。

布広 具体的にどんな勉強をなさったのですか?

髙野 当時の私には衝撃的な話でしたが、大学の先生からは、「借金をしてでも世の中の様々な建築物を見て、自分なりの良し悪しの価値基準を作りなさい」と言われたのです。そこで近年世界遺産にも一連の作品群が登録された、ル・コルビュジエを体感しにフランスに渡りました。その後も、ヨーロッパや日本の近現代建築を貪るように見て廻りました。建築物を見るたびに新しい発見や学びがあり、その経験が現在も自分の建築に活かされています。最近では、もっと遡った古民家や寺社仏閣の力強い日本的なるものに惹かれています。

布広 そして大学院終了後から、住宅の建築士として活躍を始められたのですよね?

髙野 大学院終了後は随分悩んだ挙句に、大手ハウスメーカーを選択しました。その会社はハウスメーカーとしては非常に珍しいのですが、全国各地に意匠的に有能な設計士を抱えた設計組織がありました。経歴も様々で、ハウスメーカーの枠に当てはまらない考え方や設計をする方ばかりだったので、腕を試すにはもってこいの環境でした。幸い、そのセクションにははじめから配属していただけた事もあり(一般的な)ハウスメーカーとは毛色の違う住宅に長年携わることができました。

布広 なぜその設計部門に入ったのですか?

髙野 旅で多くの素晴らしい建築空間を経験することができたので、就活時にはデザインに力を入れた設計をしたいと強く感じておりました。他社で内定は決まっていましたが、最後に訪ねた会社で面接官にある設計者を紹介されたのです。その方の作品集を見せてもらい、現在動いているプロジェクトの現場も見せていただき、ほぼ一目惚れで憧れを持ちました。そのことがきっかけで入社を決めたのです。私が配属された設計部門は、通常だと10年ほど経験値を積んだ方が配属されるような部門だったのですが、入社後すぐに配属して頂けました。

布広 通常では入れない部署に入るには、相当な努力が必要だったのではないですか?

髙野 それは運が良かったとしか言えないですね。これまでの旅でのスケッチや卒業設計などを見ていただいて配属していただいたのですが、いま思えば稚拙なスケッチや設計です。寛容にも受け入れていただけたのは幸運でした。私の入社のきっかけとなった師匠も他社でしのぎを削った方で、随分ととんがった作品を生み出していました。配属後はその方の下で修業が始まったのです。しかし、社内の私に対する風当たりは激烈に強かったですね。

布広 なぜ風当りが強かったのですか?

髙野 通常、すぐには配属されないような部署に入るということは社内で注目を浴びることになるので、風当たりが強いのは仕方がありませんでした。それからは、早々に自分の実力を認めてもらうのが一番の近道だろうと思い、社内で開催している全国の住宅設計コンペに応募しました。心身共にボロボロになりながら頑張って作った住宅でしたが、ありがたくも1年目で新人賞、2年目でグランプリを受賞したのです。そこからはほぼ毎年部門最優秀賞をとり続けたこともあり、周囲の(私を見る)目も変わって、少しずつ仕事がしやすくなったのを覚えています。

布広 デザイン部門に配属されて順風満帆にも思えますが、そのハウスメーカーを退社して独立したのはなぜですか?

髙野 入社時より、独立は視野に入れておりました。12年ほどがむしゃらに走り続けてきたわけですが、ふと立ち止まってみると組織で仕事をする限界が見えてしまったのです。大きな組織で仕事をする以上、色々な制約もあります。より自由な発想でお客様に喜んでもらう家を作るためには独立するしかないと思い立ち、決意しました。そして2018年に独立して、現在の一級建築士事務所GLAを開設しました。

森の延長にあるモデルハウス「森の素形」
~自邸兼モデルハウス~

布広 独立した後すぐに「きらりと光る北の建築賞」を受賞されています。これは狙っていたのですか?

髙野 今回は自邸での受賞ということになるので、当然意識はしておりました。この賞は市民投票で数件に絞られた後に審査員が現地調査を行うものですが、市民にまず選ばれたというのは大変うれしいことです。これまでの経験から、専門家には評価してもらえるだろうなと思ってはいましたが、市民からの評価はさすがに想像できなかったので(笑)。通常ですと住宅を設計する際に賞を意識することはありませんし、なかなか狙って獲れるものでもないと思います。基本的に、そこに住まわれるご家族のことを考えて設計します。ただ、賞を受賞するとたくさんの方に自分の設計した建築を知ってもらえるきっかけになるので、今後も機会を見て応募したいと思っております。

布広 今回受賞されたのは「森の素形(そけい)」という家ですが、どのような想いを込めて作った家ですか?

髙野 「森の素形」は、400坪ほどある敷地に建てた自宅兼モデルハウスです。400坪の土地といっても、森のように雑木が生い茂っている土地を切り拓いて建てました。その森の延長線上にあるような家を創りたいという想いからスタートした家でした。理想としていたのは、森と家に境目がないような空間です。「あれ?家の中にいたはずなのに、気づいたら森にいる」みたいな家ですね(笑)。もちろん建築は人工物なので完全な同質化はできませんが、空間としては森の延長のような家になったのではないかと思います。

布広 具体的には、どのような工夫をしているのですか?

髙野 まずは太い幹のような柱をたくさん建てていこうというのがスタートです。森もたくさんの木で成り立っているように、「森の素形」はたくさんの柱で成り立たせました。また敷地が横長ということもあり、立ち位置によって見える景色が異なるので、色々な空間を家の中にばらまき、その景色を楽しめるよう構成してゆきました。また、構造体をしっかりとした建物にすることも大事なポイントです。地震国の日本ですから当然ですが、生命と財産を守り、次代に継承できるような建築を目指したいと思っております。もちろん仕上げ材も重要で、年を重ねるごとに味が出てくる表情を意識しました。

布広 家の中には段差が多いように感じられますが?

髙野 この家は周囲の環境に即して作っているので、玄関からリビングにかけて少しずつ下がってゆきます。実はリビングの床は、地面と同じ高さに設定しております。すると地面の野花も近くに楽しむことができますし、少し他より下がった場所というのは落ち着ける空間にもなるのです。森も真っ平ではなく、凸凹などたくさんありますよね?森の延長である「森の素形」だからこそ段差などを作っているのです。

布広 最近はバリアフリーとして出来るだけバリアがない家づくりをすることが多いのですが、逆の発想なのは面白いですね。

髙野 持論にはなってしまいますが、私は家にはある程度のバリアがあった方が良いと思っております。バリアがあることで、危険を察知する能力や身体能力が鍛えられるからです。バリアフリーであまり足腰を使わない家だと、身体能力がどんどん落ちてしまうのではないかと思ってしまうのです。医療業界でも少しずつそのような認識が広がっていると、先日理学療法士の方にも伺ったところです。また家の中にバリアを作るというのは、私の子育ての考え方も関係しています。

布広 子育ての考え方?それは気になりますね。

髙野 私は、子どもの頃は小さなケガくらいであればしても良いと思っております。多少のバリアによって小さなケガをしたとしても、危険なことや状況を身体で覚え、将来の大きなケガを防ぐことに繋がると考えているからです。しかも実際に子供と一緒に住んでいると、段差を活用しだすのが面白いですよね。寝床にしたり机にしたり、座っていたり。そのような子どもなりの工夫が、発想力を鍛えることにもなるのではないかと考えています。

布広 それは冒頭でも話していた、髙野さんの小学校時代の秘密基地で遊んでいたことにも繋がるんですか?

髙野 そうですね。やはり小学校の頃に森の中で遊んだり秘密基地で遊んだ経験は、自分の原点として活きていると思います。発想力の話ももちろんそうですが、森の素形を作って自分で住みたいという想いも小学校の頃の経験から来ているのではないかと思いますね。

布広 髙野さんのお話を聞いていると、「場所」に合った「家」を創っていくことを大事にしていると感じます。

髙野 家を建てる場所のことは非常に大事にしています。土地と家はそれぞれが独立しているわけではなく一緒に考えるものですから。土地の形や大きさ、景観、方角によって設計する家は全く変わります。家は建てる土地ありきです。土地のことを考えながらインスピレーションを受けて、建物を設計していくことが大切なのです。

布広 他に家づくりに関して大切にしていることはありますか?

髙野 私が家づくりを行う上で大切にしていることが3つあります。「形の操作」「光の採り入れ方」「素材の使い方」です。どれ一つ欠けても良い家はできません。形・光・素材、お互いが三位一体として関係しているからです。土地や太陽、間取に即して建築の形がうまれてゆき、その空間には手触りを伴った滋味深い素材が与えられてゆきます。そしてその中へ適切に制御された自然光が降り注ぐことで、空間の形や素材に命を吹き込んでゆくのです。長年の家づくりの経験や様々な建築物を見てきたことで、このような考え方に辿り着きました。

布広 「森の素形」は特に形・光・素材にこだわっているように感じます。家に色気があるような…。

髙野 ありがとうございます。「森の素形」は木材など自然素材をふんだんに使っていますが、どれも手に入りやすい質素な素材が多いんです。求める空間に適した素材を適材適所に配してゆくことで、十分に空間の魅力を引き出すことが出来るんですよ。

布広 「森の素形」は前に伺った(半年ほど前にも一度訪問)時から比べても、また進化していますよね。庭にできたバーベキュー台なんか羨ましいです。景観の良い場所ですぐにバーベキューが出来るなんて。

髙野 ぜひバーベキューをしにきて下さい。気持ちいいですよ(笑)。「森の素形」はこれからも森の延長になるように、どんどん進化していくと思いますよ。私は設計に関しても、最後の最後まで進化させていきたいと考えながら仕事をしています。建物は生き物ですから、最後の最後まで新しいアイディアが生まれれば空間は変化してゆきます。もちろん締切はあるのですが、締切直前まで良くしていきたいです。

お客さまと真剣に向き合い
プロとして良い意味で裏切りたいとの想い

布広 最後の最後まで進化させたいというのが、髙野さんの建築家としてのスタンスですか?

髙野 そうですね。現場に迷惑をかけない範囲でではありますが、仕事をする上で非常に大事にしているスタンスです。それと、一度創ったものと同じものは出来る限り二度と創りたくないというのも私のスタンスですね。

布広 それは何故ですか?

髙野 建築家とは、一般的に芸術的な作家性をもつ建築士を指すことが多いわけですが、私もその端くれとして新しいものを創っていきたいですし、似たようなものだとしても常に最新の感性を集約させ、自分の中でさらに進化させたものとして創っていきたいという気持ちが根幹にあります。ただそれだけ聞くと、お客様のことを無視していますよね?そうではなく、お客様との会話から感じられるその家族の為だけの空間というものを、私の建築家としてのフィルターを通して「本物」として提供したいということなのです。設計という仕事は、お客様に喜んでいただける稀有な仕事だと思うんですよね。お客様に喜んでもらうためには、常に全力でいきたい。お客様の好みや雰囲気、建てる土地など様々なものと全力で向き合えば、同じ家にはなるはずがないのです。

布広 お客様に喜んでもらうためには、お客様側も全力で向き合う必要がありますよね?

髙野 私はいつも、家は「買うもの」ではなく、「建築家とお客様が共に良いものを探して創り上げて行くもの」だと考えながら家づくりを行っています。共に良いものを探す中で新しい価値をお客様に見つけてもらうことが、建築家の醍醐味です。建築家というのは、お客様の「夢」や「良いものにしたいという想い」に乗ることが出来る素敵な仕事です。お客様には家づくりに対する想いや要望を、どんどんぶつけてきて欲しいと思います。お客様の想いが強ければ強いほど、より良いアイディアが出てきて良い家になっていきますね。

布広 だから最後の最後までアイディアが生まれてくるのですね。

髙野 お客様をプロとして良い意味で裏切りたいと思っております。自分が良いと思ったアイディアは、提供しなければ罪だと思っていますし、自分が提案した上でお客様にフィットする方を選んでもらえれば良いのです。そのように新しい気付きを与えられれば、もしかしたらお客様の中にも考えてもみなかったアイディアやイメージが生まれてくるかも知れません。実際、前職時代には、契約間際のあるクリスマスイブの日に商談だったのですが、私自身がそのプランが腑に落ちていなかったこともあって、その帰り際に「クリスマスプレゼントです」と、180度方向性の違う模型をお渡ししたこともあるんですよ(苦笑)。お正月にどっちが良いか考えてみてくださいって。営業や他のスタッフも巻き込んだので大変でしたが、結果的に私の中でも代表作となる素晴らしい住宅となりました。

布広 そこまでお客様に向き合って考えれば、素敵な家になるのは当然のようにも思いますね。

髙野 あたりを見渡してみると、なんでこうなってしまったんだろうという切ない家が多いのも現状です。文化遺産とまでいかずとも、子供たちに胸を張って残せる住宅が増えていくことを切望します。それぞれの家や庭が、街並みをつくってゆくのですから。魅力的な家づくりによって私達の住む街が魅力的になることを期待していますし、成熟した現代であればそういう意識をみんなが持てる時代のはずなんです。少し脱線しましたが、お客様が家を育てて、逆に家もお客様の感度を育てられると最高に素敵ですよね。たとえ時間がかかったとしても、「本当に良い家だな」と思ってもらえる家に出来たら良いですよね。

布広 とても素敵な考え方ですね!これからもお客様の素敵な家づくりのお手伝いを一緒に出来たらなと思います。

髙野 こちらこそ!よろしくお願いします!

対談後記

「森の素形」の訪問者に提供されるコーヒーは、GLAのオリジナルブレンド。
知り合いの焙煎士に個別発注している代物とか。
そしてそのコーヒーを口にする際の器(コーヒーカップ)は、「お好きなものをお選びください」と隠れ扉の向こうにある数々の中から客がチョイスする仕組みとなっている。
焼き物(陶器類)にもこだわりや造詣の深い、髙野氏のおもてなしスタンスに感銘を受ける瞬間だ。
しかし同時に、ハッ!とさせられる。
もしやこの(陶器の)選択が、客の好みや嗜好をモニタリングする仕掛けなのではないか、と。
それは思い過ごしであることが、のちのち会話の中で確認できるのだが、そんなことを洞察(警戒?笑)してしまうほど、髙野氏の思考や行動、細部にこだわる姿勢は繊細だ。
依頼主(お客様)ひと組ひと組の想いや価値観を訊き出し、先々の豊かな暮らしを実現する住まいを提案する同氏。
家を取り囲む自然や街並みなど周辺環境との同質化(無理のないとけ込み)に細心の注意を払う一方、「同じものは二度と創りたくない」とのポリシーを基にした個性豊かな家づくりに取り組むスタンスからは、クリエイターとしての大胆な独創力が感じられる。
繊細さと大胆さが同居する髙野氏=GLAが創り出すお家を目にすると、まるで芸術作品に触れたかのような感覚に陥る。

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