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リノベーションにより、中古住宅に長期優良住宅としての価値を

株式会社アルティザン建築工房 代表 新谷孝秀様

札幌市近郊

お客様に寄り添い、住みよい住宅づくりに邁進する職人集団 株式会社アルティザン建築工房。リノベーションに重点的に取り組むなかで、中古住宅の価値について様々な気づきを得たという新谷社長。
リノベーションがもたらす新しい価値づくりとは?
創業からこれまでの歩みと今、そして未来のビジョンを伺いました。

技術者・職人集団「アルティザン」
リフォームの匠として

布広 まずお聞きしたいのが社名の意味です。”アルティザン”は、フランス語で「技術者・職人」という意味ですよね。

新谷 そうです、フランス語で「職人」です

布広 どのような思いが入っていますか?

新谷 どちらかというと匠みたいなイメージです。その頃「劇的ビフォーアフター」っていうのがありまして。それでリフォームの匠というのがその中で出てくるんです。〝あ、これ……匠になった方がいいな〟と。リノベーションの匠になろうと思って、アルティザンという名前は使いたいなと。それで、今は(従業員の)半分が職人かなという風に思っています。

布広 ホームページを拝見しまして、デザインとかそういったことよりも『我々は技術者だよ』と。やっぱり想いがあって、技術面なんですね。

新谷 元々技術系ですから、いつまで経っても。技術屋さんとかエンジニアだなとも思っていますけど。

布広 話は前後してしまいますが、学生時代から思考されていたとか、あるいはキャリアの中でそうなっていったのでしょうか?

新谷 そうですね。学校自体もそういうような学校ですから。機械工学科出身で建築じゃないんです。途中から建築を目指したっていう。

布広 それで設備系(の企業に)に一旦行かれるんですね?興味深いです。いわゆる理系でしょうけれども、理系からエンジニアになられて、設備に入って建物に携わるようになったら〝建物が面白い〟って気づかれたわけですね。面白いと思ったきっかけは何でしょうか?

新谷 設備は、建築があって、それに付随するようにクリエイティブさがあり、建物を作っている人の方が何か面白いと感じで、そこからクリエイティブなものをやってみたいっていう風に変わっていきました。自分で考えたものが現実に出来上がる。設備は自分で考えたものだけではないので。建てるだけでは成り立たない。

布広 設備のほうは建物に合わせて製品を収めるお立場ですよね。何軒もやっていくと、クリエイティブの方が面白いなって思っていったわけですね。リノベーションの流れで、リノベーションの専門の匠になろうと思われたんですね。

新谷 そうですね。独立の時はそう思っていました。

布広 そんなに単純ではないと思いますが、テレビ番組の影響ではないですよね? それをご覧になって面白そうだなと思われたと思うんですが。

新谷 リノベーションという言葉自体、最初無かったんです。リノベーションという言葉を使い出したのは、首都圏でマンションの大型のリフォームをリノベーションという風に言われ始めたと思います。それが波及してきて、最初はマンションのリノベーションを手伝っていました。その時自分は、建築でマンションのそういうリノベーションをやりたいという考えの不動産屋さんがいらっしゃって、その手伝いをしているっていう状況で、なかなか面白いなと思い手伝っていました。もちろん、本業の新築もやっていましたけど。

布広 前職時代のお話ですね。

新谷 新築の受注は、所得がどんどん右肩上がりで増えているっていう前提で建物を建てていましたが、リーマンショックなどが原因でもう収入が上がらないということになり、借りられる金額も少なくなったりと、今の時代と似ているかもしれません。住宅を安易に取得できなくなってきている状況でした。なんとか要望に応えたいとは思うけれど、施主さんが予算的に無理ということで……。「いや、それもできません」「あれもできません」という話をしなければいけない。そんな状況になっているなかで、これはひょっとしたら戸建てをリノベーションで使った方が、自由にやりたいことを提供できるんじゃないか、というきっかけで始めたんです。そうすると意外とできるんですよね。

布広 前職時代のマンションのリノベーションの請負から始まって、戸建てでやれたら価値が高くなり、それが会社の創業のきっかけというか「できる」という実感を得たということですね。僕も少なからず建築業界に関わって15年ぐらい経ちますが、リノベーションという概念が昔からあったような気がしています。でも比較的新しいんですよね。

新谷 新築をやっていましたから、そのリノベーションで作る物件も最低でも新築ぐらいの性能のものは作らなければと思っていました。性能面では現在ほどのものではなかったけれど、次世代省エネぐらいのレベルはやろうと。で、耐震も公共仕様ぐらいのイメージは最初から持っていて。

布広 性能っていうのはもう最初から、新谷さんの中では当たり前のことなんですね。

新谷 そうです。自分の作った家が寒いとか、地震の時に倒壊して、その中で誰かが亡くなったりするようなことは避けたい。最低限そのくらいはしようっていう風に思って始めたんです。性能はもうそれで最低限だと思っています。

布広 恐らくそれが自然の流れでずっと連続していく中で、発想と行動が連動すると思うのですが、世の中もそうだったんですけど、新築を多く扱っている観点から入ってしまうので。しかも何社か他の会社に伺っていても「リノベーションは難しい」「面倒くさい」という言葉がよく出てきます。ましてやそれを間取りを綺麗にしてみせるリノベーションならまだしも、性能をアップするなんて言ったら……という言葉をよく仕事柄聞いているものですから。それをおやりになって、実績をすごくお出しになっている貴社と新谷さんがとてもインパクトが強いんです。そっち側から見ていることの疑問符が当たり前のような感覚になっているのが、自分で更に客観視して面白いなと思いまして。

新谷 でも最初のスタートはそんなことです。もう地震で困らないように、寒いって言われるのはちょっと心外かなっていうぐらいのですね。それでリノベーションってフルに建物を見直すので。全箇所見直すので、そのタイミングでなぜやらないのっていうぐらいのイメージですよ。

布広 どうせ(ほとんど全ての壁を)取ってしまうのだからと…

新谷 ええ、見直せるんだから、見直してあげたらいいのでは、と。

布広 それとよく伺うのは、いざ剥がしてみたら想定していたものと違うものが出てきて、結果コストアップに繋がってしまったり、手間のボリュームが変わったりして、結局最初にお客さまと打合せした内容と変わってしまうことなど色々あるのが、工数がかかる要素の1つだということもよく聞くことがあるんです。結果的にはコスト、お客さんへの負担が変わる可能性があるというお話も…。

新谷 その点はまず一つは建築のプロだったら、ある程度の想定はできるでしょう。それを超えて何かが大きく起きた時、どうするのか。自分が今やってるのは1次取得者なんですけど、30代40代の子育ての世代。この子育ての世代に、リフォームで壁などを開けてみたら、見積もりとすごく違うからあと100万ね、って言えないですよ。そこは、自分の中では細く長く生きようと思っているから、もしそういうところがあったら材料費などがちょっと掛かるんだけど、もうローンで決まっているわけだから、それ以上お金が出せないのが分かりますから、工期だけはちょっと延びちゃいますよって話をするんです。で、その現場はちょっと自分の思い通りではなくても仕方がない。プロならある程度の想定できてるはずなんです。で、そのぐらいのところまでは、そんな変なものは出てこないですから。30年40年経ってたら、壁の中のグラスウールが黒くなっているのは当たり前、それで驚かない。一番困ったのは雨が浸入している壁が意外と面積が多かった家があるんですが、その時も仕方がないから時間がかかるけれど……なぜそうするかといえば、その時点で「見なきゃ良かった」ということはあり得ないんですよ。

なぜならその後……私達自身が工務店ですから。メンテナンスしなきゃいけないんですよ。そんなのをふさいでしまっていると、また面倒が大きくなっちゃうんですよ。その時点で何本かの木を取り替えておけばよかったものを、何年か経って、それが問題になってとなると、コストが2倍も3倍もかかっちゃうんです。だけど、そこだけは理解はしてもらうんですよ。これだけ、ちょっと(壁を)開けてみたらちょっと大変だったので、でもちゃんと直していきますからねっていうのはちゃんと理解してもらいます。シニア層だったら「すいません……これちょっと想定外でいくらかかかっちゃうんですけど」ということもありますけれど。そんな思いでやってます。だから、ちょっと利益が上下に変動するのは…許容です。

布広 全体で考える、カバーするということですね。

日本の住宅、その価値・評価のあり方を変えてゆきたい

新谷 年間で総額を考える、ぐらいのイメージです。日本以外の国は住宅を100年単位で使っているのに、20、30年で壊してスクラップ&ビルドしてるのは今のところ先進国では日本ぐらいです。イギリスは新築は1割しか建たないんですよ。きっとイギリスでは商売できないです(笑)。新築紹介します、といっても新築は1割ですから。当たり前に中古住宅を買ってリノベーションをしなさいというような商売が当たり前なんです。アメリカでは66年、約70年平均で使っている。

布広 1戸建てたら、ですね?

新谷 そうです。だから自分の方が当たり前だと。

布広 これからどんどん当たり前になってくだろうという想定はございますか?

新谷 そうだと思っています。2つ揃うと世の中が良くなると思っているんですが、まだまだ新築が必要なんですよ。新築もようやく断熱の基準など決められていますが、その辺に注意しながら作るようになると思うんですよ、耐震も。要するに長期優良住宅ぐらいの新築がどんどん建つ。それで中古はどうなるかっていうと、使用に耐えないものはやっぱり造り直さなきゃいけないけれど、使えるものをリノベーションして性能アップし、長期優良のようなものが再生したものも同じだけ揃う。その全コマが揃った時点で、もうリノベーションというのは無くなる。その後は骨格がしっかりしてるんだから、中身のリフォームだとか、外側のメンテナンスで暮らす。そうすると未来の人は家を買うのではなくて、家を直して住むだけだから、「住」に対してのお金が少なくて済むんですよ。それがヨーロッパやアメリカなんです。そうすると生涯の給料が少なくても、「住」にそんなに掛けないで済む。生涯に3回も建て直すようなことしてるといくらお金があったって豊かに暮らせない。そのリフォームだけの仕事にいずれなるのではないかと思うんです。

そのころの未来には自分はもういなくなってるけれど、そうするとその人たちの未来は、そんなに給料も…これから日本は上がると思いますけど、それでも「住」にかける割合が少なかったら豊かな暮らしができる。いつも思っているのは、1ヶ月ぐらいバカンスをとってもちゃんと暮らせる世界に日本がなる。慌てて帰ってくるような旅行ではない、と。それから余裕ができると美術館に行ったり、博物館に行ったりするような行動ができると、もっともっと、僕が言うことではないかもしれないけれど、文化的に良くなると思います。

布広 なるほど。

新谷 国策もそういう風になってきてますし、誰もが気付いたことは、スクラップ&ビルドし続けてる日本は、お父さんお母さん世代が投資した金額…積み重ねた分を、社会的に壊してるから、資産となって残ってるものの間が500兆円差があるんですよ、500兆円の損害。要するにお父さんお母さんが積み上げてきた金額と、社会に残ってる資産としての住宅、この間が500兆円差。アメリカは、積み重ねたものと、壊してないので同じぐらいの資産が残っている。時と場合によっては資産の方が高い時があるんですよ。それは古い方に価値があるっていう風に認めるような部分あったり。それを…気づいているんですよ。もうそんなことをしてる場合ではない。空き家はたくさんあるのに、家を必要な人より家が充分あるのに、そこにまた建てさせるってことはおかしいだろうと。空き家をちゃんと使おうという風になっていくと、そのギャップを埋めることができる。

布広 僕もそこには思いがあって。ここ数年では「SDGs」が社会一般用語になってきたのもありますが、そもそも10数年前ですかね、どこかの国の方が言ってた、日本語を使ってMOTTAINAI(モッタイナイ)もありましたね。ああいう(モッタイナイのような)感覚っていうのが多分みんな潜在的にはあるのですよね。

新谷 きっとあると思いますよね。

布広 なんでそんな毎回毎回…お家もそうですけど、車も必ず新車だろうとか。もちろん機能・性能がアップデートしてはいるんだろうけれど、どうしてイチから新しくなきゃいけないんだろうっていうような思いはありますよね。

新谷 そうですね。元々日本の人は、スクラップ&ビルドしているかというと、そうではなかったはずなんです。1度作ったものを長く使おうという考えだったんですけど、戦後にたくさん家がなくなって、そこからちょっと考え方が変わって、とりあえず住めるものを作る。使えなくなるから壊す。誰も家にお金をかけてメンテナンスしようとしないという風潮に変わったのは近代だと思います。

布広 確かにそうかもしれないです。言っても100年弱ぐらいでしょうか

新谷 そうですね。その前の本質が、ちゃんとそういうのがあるから元に戻るはずなんです。

布広 思いというか、そのDNAとまでは言わなくとも

新谷 そうそう。どこかにちゃんとそういう想いがある。今の若者はビンテージの服を平気で着るし、そういう感覚があるし、昭和レトロなものに愛着を感じたりしていますよね。

布広 時代は益々そうなっていくと思いますし、僕らの根っこにもそういう思いが残ってたはずだし、先取りじゃないけど、若い人にはそれがすごく自然に、普段着みたいに…

新谷 自然に捉えてくれてると思います。特にね自分達は30代40代の人達にこういうのを提供しているんですけど、その親御さんは「なんで新築じゃないの?」「中古買ってどうするの?」っていう話をされます。世代ギャップがあると思います。でも、ここからまた10年経つと今の10代が子育て世代になり、その人たちはSDGsを勉強しているので、その選択の中に「もったいないんじゃない?新しくわざわざ作るのは」っていう風に必ず変わっていくので、未来はそっちの方に進むんだと思います。

布広 新谷さんは、そういう世の中に戻るだろう、あるいは、なっていくだろうとずっと思ってらっしゃったんですか?

新谷 こういう仕事をやっていると、そういう風に思うようになりました。で、どちらかというと自分が(良いと思って)やってきたことに、(行政側が)補助金つけてくれるようになったな、ですとか。自分はただ断熱をしっかりやろうと思っていただけで、この断熱の評価がすごいことになっている、と後で知りました。自分はただ断熱を一生懸命やっていたら、いつの間にかHEAT20のG2レベルですと。知ってやっているわけじゃないんですよ、一生懸命やっていたら、そのあとからわかるという。耐震もちゃんと作ろうって思ってやっていたら、それはアドオン工法を上部標定1くらいはできているんだとわかって。じゃあ、もうちょっと頑張ってみよう、と。

布広 今、耐震等級も3が当たり前に取れるようにお取り組みになっていますよね。

新谷 はい、できます。

理念に共鳴するお客様が増え
支持が徐々に広がった

布広 目指す世の中がそうなるという理念や考え方というよりは、従事していく中でどんどんそうなっていった、というほうが自然の流れですか?

新谷 そうです。自分は(お客様に)育てられたと思います。自分がいくらそう思ってもクライアントがいないとこんな仕事成り立つわけがないんです。みんな応援してくれているようなもの。自分でやっていることに気づいてくれて、それでやる、やりたいっていう人が現れてくるんです。自分が退職して(家を)作りだした時に、新築もあるよな、リノベーションもあるよなと思ったんです。リノベーションを作ってオープンハウスでやるとたくさん人が来てくれるんですが、同じように新築で作ると1日オープンハウスを空けておいても1組か2組来るか来ないか。日曜日あけておいても来場数が少ない。でもリノベーションでやるとすぐ来てくれている。そうするとあまり情報が来ない、もしくはたくさん競争しないと建てることができない。新築じゃなくて、せっかく応援してくれるリノベーションでやってもいいかなと思っている人に向いてる方がいいと。だからリノベーションが忙しくなっちゃったから、新築ができなくなったイメージです。自分で無理やり作った市場でなく、理解してくれる人たちに支えられてできた市場だと思います。

想いは、コストパフォーマンスの最もいいものを提供したい。コストが高くて性能がいいのは作れるし、コストが高くてデザイン性のすごいものを作ろうと思ったら作れるんだと思うんですけど。でも、コストはそう掛かってないけどパフォーマンスはすごくいいよねっていうようなものを作り続けていきたいなと思います。

布広 ある意味、日々精進・日進月歩的なところが、社長はもちろんかもしれませんけど、アルティザン建築工房さんの会社の中で常態化しているんでしょうか?

新谷 そうですね。自分達は失敗するんですよ。失敗は経験値。その時点で会社が終わるわけではないから。失敗したらその失敗を、どうやったら失敗しなくて済むんだろうっていうようなことを(考えます)。共有し続けたいと思ってるんですよ。

布広 カイゼンの連続っていうか。

新谷 年に1回、1軒しか建てられないとしたら、失敗したら直して付け替えてやったりするけど、そうではなくて、ずっと連続していくので。

布広 そうですよね。そういった技術は日進月歩ですし、支えている思いはコストパフォーマンス、いいものをできるだけ手頃にご提供したいということですね。これ結果的に今の建築業界というか、どんどん、10数年前からなっていた、SDGsもあるけれど、僕直近でいうと新型コロナウィルスの影響がすごく大きかったと思っていまして。大きく言うと2つ、コロナによる資材などのアップ、高騰したということ。札幌にいたっては土地がなかなかない…ということにおいては新築市場に今、結構向かい風が強い。そうした時に一番気の毒なのは30歳前後の一次取得層が急に高い買い物ができなくなってしまったというのも……

新谷 もう家が買えないんじゃないかなという

布広 新築で、通勤圏内でとなると……

新谷 そんなの無理だと思って

布広 そこが今、貴社のいわゆる中古物件をどこかで手頃な価格で見つけて大きくリノベーションして、結果的にスキームなんですけど凄く市場性にマッチしてると思いませんか?

新谷 と思います、時代が後押しして。新築が坪単価100万円とか。注文でちゃんとしっかりしたものを建てるとなったら坪100万円とか90万円掛かるようになっちゃったら、そんな家はもう持てないに決まっているし。かと言って60万円ぐらいで建てようと思ったらチープなものになるんだろうなって思う。でもこの家(取材場所の戸建て)は坪63万円ぐらいでできたからコスパいいと思うんですよね、性能も。性能が好きな人ってデザインをおろそかにするんですよ。窓小さくして、性能の為には犠牲にするんだけど、自分は両輪だと思っているので、そこをおろそかにはできないんです。かといって、物凄いデザインが出来るかというとそんなことはできないけれど、ちゃんと整えることはする。

布広 さきほど社長、どこかのフレーズでも「豊か」って言葉を使われていましたね。性能を突き詰めると、極端にいうと「窓を小さく」みたいな人もいるでしょうけれど、やっぱり、豊かさを空間暮らしの中でやるとしたら、窓が大きくて明かりが入った方がいいよねと、当然出てきますよね。

新谷 そう。それで四季があるんだから、真冬のことばかり考えても仕方がないし。夏は爽やかに暮らしを出来るようにしないと。

布広 なるほど。今の若い人達にもこの市場の可能性をすごく感じ取ってもらえれば御社にとってチャンスも大きいし社会的にも意義が高いですよね。

新谷 自分は、来てくださるお客様、ユーザー目線で仕事をしています。あまり燃料費のかからない家の方がいいよねと言う仕事をしてるんですが、それがいつの間にか社会にある課題を解決する一助になってるんだと思います。中古住宅を壊してしまうんじゃなくてちゃんと使おうとか、それからCO2削減のためにちゃんと断熱をして役に立つなどというのは、後からついてくると思っているんです。それと、最近は太陽光をつけたりしていますけど、その時点でそんなにたいしたことないなと、その入居した若い人たちが思っても、何年か経ったときに「これはあって良かったね」っていう風になるぐらいで十分だと。

それと似たようなことは、家の歴史…「家カルテ」。家の履歴を残すんです。新築で履歴を残さない人もいてもったいないなと思いますが、中古住宅に履歴を残すんです。30年間保管しています。そこにアクセスできるのは本人と私たちだけ。何かのタイミングで売却しなきゃならないっていう時に、その履歴を次の購入者に見せることによって「この家はリフォームですけど長期優良住宅の認定を取ってます」とか「こういう性能でこういうもの使ってます」などと証明できるということです。まだこれは熟成していないんですが、土地ではなく家に価値を見いだしてくれる。そうするとそれを売却することによって、次のステップに行く時の役に立つと思っているんです。多分、お客様はそんなことをやっているのを忘れると思うんですが、売却する時に「これ残しておいてもらって良かった」と。その後で気づいてくれるぐらいでもいいんですけれど。

布広 履歴っていうのは、具体的には何て言うんでしょう。例えば2023年にこういうふうなリノベーション工事をした、材料はこういうのが入って、みたいなものを残していく?

新谷 そうです。

布広 リノベーションの履歴を残すということですね。

新谷 そうです、形は新築の履歴を残すのと一緒なんですけれど。

布広 さきほど、新築でもやらないところもあるとおっしゃっていましたが、なぜなのでしょうか?新谷さんの中では、やるのは当たり前ということなんですね

新谷 これは、途中で気付きました。特に自分たちが扱っているのは、築30年の家をリノベーションするわけですよ。そして10年経ったら… 残念ながら新築の場合はここで新築すると「築10年」なんですよ。だけどリノベーションは確認申請、もしくは不動産登記簿謄本に出てる年数からいくと「築40年」なんです。20年経ったら「築50年」なんです。だけど、今の時代の新築にも負けていないものを評価してくれないのは困る。時代は追いついていないけれど、そのうち時代が追いつくかもしれないから、ちゃんと履歴を残してあげた方がいいなと思います。

布広 土地建物は評価する時に上物=建物は(価値が)減る一方ですよね?一律で評価というのを測ってみると、土地は不動産の事情に合わせて上がったり下がったりしますけど、不思議なことですよねある意味。ちゃんとやればやるほど。

新谷 でも今は、少しは考え方が変わってきていますよ。新築し、経年で価値が下がっている、でもリフォームするとまた少し価値が戻るっていう。ノコギリ型の下がり方をするような。世の中もそうなるし、国もそう考えているところもある。それが、その評価の仕方が今のところ確立していないからですね。見た目で不動産屋さんがこのぐらいねっていう感じですが、いずれ変わると思うんです。世の中、土地だけの評価ではなく、ちゃんと建物も評価する。30年経って土地だけだ 価値は、ということではなく建物も評価するっていう。

布広 それは面白いですね。

新谷 他の国がそうなんだから。

布広 そういう意味では何か日本ってやっぱりちょっと…

新谷 ちょっと異常になっただけなので、また振りもどすっていうことだと思います。

布広 私たちもいろいろなお客様に来ていただいて、新築のご紹介だけではないんです。今回もいろいろお話しさせていただいていますが、中古の物件ってやっぱり徹底調査してみないと分からないよねと、そこで終わっちゃうんです。おっしゃるとおり全棟がもし履歴を残していていくことになれば(まずその履歴を)確認してみましょう、という流れに変わりますよね。

新谷 変わります。

布広 楽しみですね。世の中が劇的に変わりそうで。国の施策とか分かりやすく言うと補助金とかよくありますが、何か胎動を感じるところ…新谷さんもなにかもうお有りですか?業界内でリノベーションの評価や利益に対するもので…

新谷 中古住宅にどう評価するかっていうのを、少しずつそういう動きはあります。全部中古住宅になるわけだから、新築したものも中古住宅になるし、リノベーションしたものも中古住宅なる。その中古住宅の評価の仕方が「宅地建物取引主任者」っていうのが「宅地建物取引士」になったのですから、この人たちが建築もある程度わかるような区別ができるようなものになると思います。「士」が付いたぐらいですから。そうすると、この土地はこのぐらいの価値で、建物はこのぐらいの価値があるから、それで売買ができるっていう風になると。今までは「家を建てます」は何の貯金にもならなかったけど、ちゃんと投資であるし、それから貯蓄であるっていう風に思ったらお金をかけても平気ですよね。お金をかけても、そのかけた分の価値が100でなくても、ちゃんと残ると。しかもメンテナンスしていると、限りなく100に近い評価してくれる。これはお金を捨てているわけではない。…今までは3000万円の家を建てました、壊しました、0円になりました。また、3000万円かけます。…そういうことではないので、貯金しているのと同じ。

布広 投資したものに対してまともな評価が伴うっていうことですね。誰もが肯定しかないですね。

新谷 これを車にできているのだから、そのうち建物にもできる。今の中古車に価値があるように。だからちゃんと買ってくれるし、それにいくらか上乗せして、また売却できるっていう仕事ができている。家もそんな感じになると思います。

エネルギー高騰社会を見据えて、未来の住宅環境づくりに取り組む

布広 ありがとうございます、このフェーズでもし言語化できるならばしていただきたいのですが、それをやり続ける新谷さんの理念やポリシーはどういうものなのでしょうか。

新谷 いま目標にしているのは、今世の中カーボンニュートラルを目指していますが、ちょっと工夫すると誰もが手が届く、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)は作れそうなので今はそれに興味を持って一生懸命やっています。建物までは作れたけど、それに省エネの太陽光パネルを乗せるのにまた更に費用をかけるっていう風にはできないですよね。だけど、今PPA(電力購入契約)を使っているから。しかも先程の新築が100だとしたら、価格を70%に抑えたところに、さらにそれで太陽光パネルを乗せる力があればいいけれど。乗せをするのも無料太陽光だと誰もが手が届く、ZEHができるっていうのは可能性ある。それをたくさん作れたらいいなと。

布広 この今、おじゃましているモデルハウスにもそれがありますよね。

新谷 太陽光パネルも付いています。

布広 太陽光パネルも乗っているし、全室、空調。全館空調「サスティナくん」ですか

新谷 4キロワット(14畳用)の能力の家庭用エアコン1台で、この空気空間です。

布広 冬が楽しみですよね。(一般的には)エアコン1台の空調で冬大丈夫かなって思うわけですが…

新谷 大丈夫です(笑)。最近はスマホでここの温度環境を見られるようになっています。外気温が上下していますが、室温はずっと一定です。

布広 心地良いですね。そう考えると、やっぱりエネルギーも無駄に使わないし

新谷 そうですね。これからの住宅に求められるのは、いかに電気代が少なくて済む家か。電気ですごい勢いで上がってきますから。それを今まで通りの垂れ流しのエネルギーの家で住んでいると、光熱費が大変なことになってくるから。ちゃんと断熱をしてエネルギーの少ないような…。「エネルギーが少ない」っていうのは、我慢して使いなさいではなく、普通に暮らしていて、ちゃんとエネルギーが少なくできるような家を作るっていうことが必要になると思います。

布広 今日はどうもありがとうございました。

 

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