打てば響くひと、響かないひと ~トラブル対応のあたりまえ品質~
「弊社としては、これこれこういう基準の下、通常通りの対応をさせて頂いております」
たびたび耳にするセリフだ。
言葉遣いが丁寧なぶん、逆に質が悪い。
なぜか。
まっとうな行動をとっているように一瞬認識するが、実は相手の要望に応えようとしていない(これ以上は応えない)ことの宣言だからだ。
最近わたしの身の回りで起きた件も、まさにこのセリフが始まりだった。
先週の某日、会社で使用しているプロジェクターに異常が発生した。
始業直後に電源が切れ、以降はうんともすんとも言わなくなった。
業務および取引先に迷惑がかかる事態に及ぶため、購入先である某家電量販店のサービス窓口に相談電話をかけた。
症状をお伝えし、かつ通常の修理対応(窓口持込→預り→数週間経過→改修→窓口引取)では困る旨を話した際、先方が最初に伝えてきたのが冒頭の類のセリフであった。
正確に表現するなら、
「当店としましてはお客様のお話を製造メーカーサイドにお伝えし、修理依頼をたてるまでが保証範囲で対応できることになるのです」
知っている。
何故か。
保証書にその旨明記されている・・・のはもちろんだが、
実はひと月前に同じ症状で同じ対応を受けていたからである。
そしてその際は、当然ながら先方の規定通りにご対応頂いている。
顛末まで含め状況をお伝えすると、
メーカーの工場に数週間(一カ月近く)もの期間預けた後、対応頂いたメーカーからの回答は「正常起動。分解清掃のみ実施」との事であった。
つまり今回の事態は、2度目の発生なのである。
しかも実は1度目の引取り後、まだ2週間も経っていないうちに発生した同じ現象なのだ。
件の家電量販店さん、この先の対応が違う。
・2度目の発生
・引取り後2週間程度しか時間が経過していない中での再発
・1度目のサービス窓口持込時、貴店店員と通電確認を行い、作動しないことを確認しあっていた事実
・弊社はプロジェクターという「箱」を購入したのではなく、某用途を満たすためのツール活用を期待しての購入
・その使用用途のタイムラグ数週間は取引先との契約反故に繋がりかねない
・数日後にイベント使用を控えており、1度目の修理依頼はそのスケジュールを逆算しての持込だった
・「5年延長保証」は万一の備えとしての安心を購入したつもり
・・・etc.
こちらの事情に傾聴して下さった結果、私が先方に吐露した発言集である。
お気づきだろうか。
この家電店員さんは、保証対応というレベルを超え、
対象商品の購入時ニーズや使用目的を聴き出し、消費者側が当該ツールを失った際の逸失利益、果ては延長保証購入の潜在ニーズまで確認しているのである。
結果、
現在わたしの手元にはメーカーからの代替品が用意され、使用用途にタイムラグは発生していない。
特別にメーカーサイドに交渉し、代替品をご用意くださったとの事だが、なぜそこまでして下さるのか。
思わず当家電量販店さんのホームページを垣間見る。
「お客様第一主義を実践し、最高のサービスをお客様に提供する」
「一人ひとりのお客様を大切に、最高の満足と喜びを感じていただく」
「より豊かな生活を提案する、進化し続けるこだわりの専門店の集合体」を目指す
見事である。
会社の経営理念と行動規範が、現場最前線の店員さんにまで徹底されている。
そう、トラブルはチャンスなのだ。
お客様の言葉に真摯に耳を傾け、真のニーズやウォンツに気付かされ、自らの行動改善につなげる。
挽回のチャンスを得る事が出来れば、相手のマインドシェア拡大につながる可能性を得ることができる。
社会である程度のキャリアを積んだ者であれば、多かれ少なかれ知っている教訓である。
事情をご説明させて頂いた結果、こちらの店員さんの場合、
見事に「打てば響く」タイプの方でした。
今回の「おもてなし品質」。
イレギュラーの対応でしょうから社名や店名は書き控えますが、感動させられましたよ。
大山さん!
広木さん!
代替品に最上位機種を用意させる周到さは、ちょっとだけ憎いけどね(笑)